あとがき
 D-425のシリーズ2作に続いて3番目に取りかかったのがこの「モダン少年」です。時期的に大学入試が控えていたので、作りたかったD-425の3作目の前にやっつけで仕上げようと思った作品です。なので製作が楽になるように、ほとんど白バックで撮影するストーリーにしました。しかし脚本は早くに書き上げたものの、結局はほとんどが受験が終わってからの製作になりました。

 このストーリーの元になったのは、自作小説を頻繁に書いていた頃のアイディアの一つで、全て夢の中で進行する物語として考えていたものでした。ストーリーは夢の中でヨーロッパの公爵みたいな人と会って、現実より夢を取るように迫られるという感じで、主人公は次第に現実と夢の区別がつかなくなっていくという流れです。夢の世界は一面真っ白の世界を想定し、アバウトな構想しかありませんでしたが、今回レゴで作ることで初めて具体的なストーリーを与えました。白い世界のイメージや、夢と現実の感覚が狂うという発想は「THX-1138」や「マトリックス」から来たものです。そこに「未来世紀ブラジル」のイメージを合わせて脚本を書き上げました。レゴ版ブラジルを作ろうという意図があったので最初のタイトルは「現代日本ブラジル」とし、今の日本の中学生(特に受験生)の不安や悩みをテーマにしました。本脚本を書く時点で「モダン少年」にタイトルを改めました。また脚本で中学生となっていたのを、製作の際に単なる学生としました。

 製作は受験後の暇な時期にやったため、白バックでなくてもレゴでセットを作る余裕ができました。そこで、街にドラゴンが現れて少年が騎士の姿に変身するコマから白バックにする予定だったのを変え、あくまで現実世界で戦っているようなシーンにしました。これは読み手をミスリードする意図もありました。背景が白バックになったら、そこからはもう夢の世界であることがバレバレであるので、最終話の医者と看護婦のアップの衝撃が薄れると思ったからです(伏線として1コマ白バックにしました)。これは未来世紀ブラジルでも現実かと思ったら夢だったという流れになっています。実際はドラゴンとかが出てくる時点で夢に決まってるのですが、ファンタジーな世界観の漫画がたくさんある世の中なので読んでる方はドラゴンくらい気にしません。未来世紀ブラジルの夢パートも不自然な展開なので2回目に見るとはっきりと夢と分かりますが、初見ではテリー・ギリアムの独特な世界に呑まれて夢と現実の区別が付きません

 夢の中で騎士(主人公)が姫を助けたり、姫と一緒に旅に出たと思ったら夢だった、というのは未来世紀ブラジルから来ています。最初と最後に出てくる英文は映画の主題歌の「ブラジル」の歌詞です。脚本を書く時にはこのブラジルの歌詞を使うか、エミネムの歌詞を使うかで悩みました。作中でエミネムの名前が出てくるのはその時悩んでいた名残です。Loose yourselfの「チャンスを逃すな」という歌詞や8 Mileの「この8マイルロードから脱出して一人で新しい土地に旅立つ」という内容の歌詞が、このストーリーにマッチすると思っていました。ただ挿入詩の文章が変わるだけだと思うかもしれませんが、8マイルを使う場合はコミックのストーリーも一人で旅立つというものにしたかったので、結構重要な選択だったのです。もし8マイルを選んだ時のストーリーは、「ラストで付いて行くという姫の申し出を少年は断り、最後に名前を聞かれて『リアル・スリム・ナイト(笑)』と名乗り一人去っていく」というものにする予定でした。タイトルをモダン少年に変えたのも、ここでどっちにするか悩んでいたからです。最終的にはエミネムの暗い感じを嫌ってブラジルを選びました。「現代日本ブラジル」というのはサブタイトルに持ってきました。(リアル・スリム・ナイトというのは、リアル・スリム・シェイディというエミネムの歌を捩った名前)

 ストーリーの中核は全て少年の夢の中で進行します。なので登場人物は少年の心の表れとも言えます。自分を励ましてくれる姫は、現実から夢に逃げ込みたいという心の表れ、敵の赤騎士(先生)は現実に戻らなければならないと思う心を表しています。敵とはいえ赤騎士も少年の妄想であるファンタジー世界の一パートを演じていますが、最後上空で対向した時呼びかけた名前は「青の騎士」ではなく「竹田」になります。とまあ、色々書きたいこともありますが、これ以上の深読みは読者に任せたいと思います。

メイキング

2006/01/29
 学校の職員室。オフィス机とかカーテンとか花瓶とか、試したいことをやってみた。このセットは大学入試のだいぶ前に作ってる。フィグは先生と少年。本当はこの2体は仮フィグのはずが、本編用フィグを用意して撮影する前に壊しちゃったので、仕方なくこのフィグを使って撮影していくことに。同じ画を使いまわし。
No.1 No.9

2006/02/12
 これも入試前に作って撮ってる。少年の家の居間。タンスとテレビにてこずった。テレビは苦労しながらも、結構いいものができたと思ったが、黒で潰れて見えない。これも同じ画を使いまわした。
No.1 No.9

2006/02/27
 少年の部屋。1話だけの為にチマチマと作り込んだセットを3個も作った。2話になった途端に、「手抜き」とか罵られるんじゃないかとビビッた。兵士の兜とかライトセーバーを置いてみた。
No.1 No.5 No.8

2006/03/06
 ほとんど白バックでの撮影で、セットは少ない。少年の部屋の前の廊下。父親が登場。グレーの物は電話かファックスのつもり。でもタイプライターに見える。
No.5

2006/03/13
 9話から白バックでなくなったので、セット製作。といっても、前のセットを拡大したもの。黄色の傘はちょっと無理あったか?
No.9

2006/03/13
 早朝の自宅のセット。裏側は作ってない。右隣にももう一軒家を作りたかった。撮ったのは朝ではなく夕方。寒かった。
No.9

2006/03/13
 この日のスケジュール過密すぎ。少年が試験に向かう通り。窓の向こうが透けて見えちゃうので、裏側にもちゃんと壁と屋根がある。右の建物は一応バイク屋という設定なので中にバイクが並んでる。見えないけど。左のは服屋。
No.9 No.10 No.11 No.12

2006/03/15
 通りのセットその2。警察署。面積的に最大のセット。街の撮影で、今まで作ってきた車が役に立った。一回こういう大きいビルをちゃんと作ってみたい。
No.10 No.11 No.12

2006/03/20
 少年の病室。窓から入る自然光で撮影するため、壁を高くして余分な光をカット。窓の外に見える壁や手すりも作った。ガソリンの給油ポンプを使った点滴が一押し。
No.13

ドラゴン
 ダイノアタック・シリーズの恐竜。背中に2x2が出っ張ってるので羽を付けてみた。恐竜の評判はよくないが、恐竜目当てでバギー買った。

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